<’96年12月25日>

  時代は”地方の時代”から”個人の時代”        さらに”ネティズンの時代”へ

        地域の数は多く、情報化の動きは早い。 特に情報化は「三ヶ月前は大昔」の世界であると同時に、文字どおり世界中で同時多 発にあちこちで新しい動きが起こり続け、とても一個人では総てが理解も掌握もでき 難いスピード世界になってきた。  その迷宮のような高速自己増殖世界も組ほぐせば地域毎の集まりであるのはかわり ないが、それ故に、ボーダーレスの世界地域間競争や地域連携に否応なく我々は気付 かされているし、なかでもインターネットの登場は様々な事例を身近に感じさせている。  例えば、コアラ事務局を訪ねて下さる方々から思わぬ動きを聞かされるモノで、イ ンターネットでコミュニケーションも仕事成果もやり取りできることを前提に、安い 優秀な頭脳を欧州地域----東南アジアだけが安いとは限らない----で集結させ、ハ イテク先端地域のシリコンバレーで活躍する夢や場を与え、出来上がったモノを日本・東京で売る、というようなそれぞれの地域特性を組み合わせて活躍する中小企業が出 てきたり、アメリカのベンチャーキャピタルの紹介を受けて軍需産業をベースにした イスラエルの高度技術を契約購入して新地域サービスを始めようとする大手日本企業 がでたり、、、こういった中に我々の地域はどのようにはめ込まれるのだろうか?気 になってしまう。  ここにはまさに新しい地域づくりビジョンが求められているようだ。 コアラの出発  コアラは1985年、東京一極集中に対して、地域に住む喜び、地域に縁を持つ素 晴らしさや楽しさの実現を目指して地域活性化運動「一村一品運動」の情報化版とし てスタートした。  当時は、通信の一次的規制緩和が行われ、NTTの民営化、キャプテンの出現など、 情報化が東京一極集中の強い解決手段として注目され始めており、青年会議所や経済 同友会若手などを中心に30名ほどが楽しさ半分に集まった格好だった。  スタート当初は、パソコン通信ネットワークを利用した中小企業のためのデータベー ス構築やその利用を考えたが、試みてすぐに挫折。データベースだけでは面白さも楽 しさも、ひいては企業興し、地域興しも感じられず、それよりも副次的に用意した当 時としてはまったく新しかった「電子メール」や「電子会議」といった“双方向コミ ュニケーション”ツールの面白さを“発見”して、そちらに一気に走り始めたのがコ アラ進展の第一の重要ポイントだった。 それを使いこなせば誰もが、個人でも情報発信できる、ということに、マスメディア の東京発信偏重を打ち破る地方からの発信だ、と、皆が興奮したモノだ。  しかし、一段落してみれば、地方〜東京間の電話代の高さから、各地域は東京へ継 続的には情報発信できず、自然に途絶えたり、又は「電話料金から描ける半径」で各 ルーラル内にこじんまりと地域ネットと称してまとまらざるを得なかった。  さらに、東京の大手ネットが全国主要都市にアクセスポイントを開設して東京と主 要都市間の電話料金格差のないパソコン通信ネットワークを拡張しはじめた。これこ そ、情報化社会の恩恵であっただろうが、が、それは各地域が東京にストロー現象で 吸い上げられてしまったように見えた。九州では特に福岡がそうなってしまったよう だった。人が集まるところに情報も金も技術も良質サービスも産み出され、現実世界 と同様に電子ネットワークの中もが東京一極集中になってしまった。  コアラはどうしたか? 例えば地域ネットとしてふるさと創生資金を使って「電話 料金から描ける半径」を伸ばし、豊の国ネットと呼ばれる県内どこからでも市内料金 で通信できる情報道路を世界に先駆けて1989年、公共インフラとしてこしらえた。 これで、少しは地域ネットの対象人口が増えた。  だが、東京中心大手全国ネットの勢いには比べモノにならない。パソコン通信が社 会的に認知されればされるほど、、、企業利用が進めば進むほど、多くの人達が、当 時50万人を超える大手全国ネットを電子インフラとして認知し利用する傾向が顕著 になってますます地域ネットには厳しい状態になってきた。特に全国大手企業の支店 等で働く人達にはその方が便利だったろうし、人数の多さと全国域をカバーする話題 はそれなりに便利だろう。地域ネットは存続そのものが難しくなってきた。  そういったことを憂いつつ、生き残っていた六つの地域ネットが集まってNN連合 (National Electric Neighborhood project)を組織したのは1993年1月だっ たろうか。道新オーロラネット(北海道/北海道新聞社)、コミネット仙台(東北/ 仙台市と地元企業)、中日ネット(東海中部/中日新聞社)、ライナー富山(北陸/ 富山市と雑誌出版のシー・エー・ピー)、C−DAS(中国/広島県と中国新聞社)、ニューコアラ(九州)のそれぞれは同じシステムを使っており、その電子会議室デー タを自動的に共有するシステムを稼働させて、東京中心のネットに対抗する多極型の 全国ネットを実現。一つ一つは小さくとも全体では1万数千人のネットになり、かつ、 各地域が主人公でそれなりの面白さがある。それぞれの地域ネットが生き返ったよう だった。  ところがそれをも押しつぶしてしまう大手東京ネットの勢いで、会員数はなんと1 00万人を簡単に超えて行っている。これでは大分であってもコアラに入会するより も大手ネットに先に入会することが当たり前になってしまう。 地域はそれらの大手ネットをインフラとしてその中で地域毎のフォーラムを開く方向 しかないのだろうか?  そう思いつめつつある時にやっとインターネットの進展が追いついてきた。 パソコン通信とほぼ同時期にスタートしたインターネットは、電話料金を官(日本で は文部省)が負担するという、利用者にとっては究極のつなぎっぱなしのメディア像 を発展させてきたが、大学関係者や研究者にのみに利用を許されたものであり、我々 一般人にはどうあっても門戸が開放されなかった。が、94年初春、民営インターネ ットが立ち上がって一般人向けにサービス開始がやっとのことで始まった。  これにつなげばコアラも楽しくなれる、と、思うが、現実は厳しく、それらと接続 するには、当方の負担で東京まで専用線を張ることが条件であってとてもできるもの でない。またもや東京に近いところが優先される仕組みだ。しかし、半年後の94年 7月7日、福岡に民営インターネットの出口が出来たことで、地域ネットとして最初 にコアラはインターネットと完全接続することができた。  するとどうであろう。 コアラにアクセスしwww を覗けば、その隣はワシントンでありパリであり南アフリ カであり、、、その中のワンノブゼムとして東京があった。東京は、数ある世界地域 の一つでしかないことが実感として見えてきた。  東京一極集中が電子ネットの中に埋没してしまったようだった。なにしろ、東京の みならず国内にあるインターネットサーバーは大学や研究機関ばかりの時代であって、一般人相手のホームページは日本にほとんどない。つまりは見るところは海外にしか ない状況。  コアラメンバーは、世界を見て歩き、その結果をパソコン通信電子会議でお茶の間 談義する。地域市民から世界市民(?)になったような感覚。ネティズン(ネットワー クを使いこなし活性化された市民)感覚の進展であっただろう。 いよいよ、地域はインターネットに代表される情報通信インフラで地域としての自主 性を持ち、東京の束縛から免れるチャンスが来たのだろうか? インターネットブームの中で  1995年の春頃からすごいインターネットブームになってしまった。コアラの事 務局は問い合わせの電話でてんてこまい。収拾がつかない状態が来る日も来る日も続 く。とにかく市民むけのサービスを開始しているところが少ないので西日本各地から の入会問い合わせと「どこから始めたらいいのか?」という個人にとっての基本的な 質問が朝から晩まで続き、人を増やしても、どうやっても十分に対応できない始末。 それに輪を掛けたのがウィンドウズ95の発売。とにかく商売上手のマイクロソフト のPRに「簡単に使える」はずだ、と、皆が思い込み、それをコアラ事務局に求めて くる。それはマイクロソフトに聞いて欲しいのに。それから一年、その混乱に追われ つつ、はっと一年を振り返ってみれば、再度、東京が力強く、圧力を増しているでは ないか。  ベンチャー気運を巻き込んで、企業を巻き込んだすさまじいインターネットブーム になっていた。  10年前のニューメディアブームに比して、既に300万人以上のパソコン通信ユー ザーがベースになったブームであり、情報ハイウェイ構想の追い風を受けてもいた。 いや、それ以上にパソコンそのものの社会への広い浸透がブームに厚みを与えている のだろうが、そうなるともともと人口集積のあるところの方が火がつきやすい。東京 はホワイトカラー、つまりパソコン利用者が本質的に多く、プロバイダーも東京でス タートすれば専用線設置代も安くユーザー確保もやりやすい。  東京のプロバイダーは、一年遅れでスタートしてもあっというまにコアラのインター ネットユーザー数をオーバーする利用者獲得であって、情報提供する企業も鰻登り。 インターネットの性質上、多極型であるのは間違いないが、その極の数が東京に多く ある、という、いかんともし難い状況で、またもや東京集中だ。  しかし待って欲しい。 新しい仕組み(今回はインターネット)をなぜ東京からスタートさせるのか?採算が とれずとも、ルーラルな地域にこそ東京に先んじて実施発展するチャンス、東京を分 散させるチャンスの仕組みを作れないのだろうか? 第二国土軸構想をそのような仕組みで実施できないだろうか?  従来型の第一国土軸沿いの情報インフラ整備は間違いない経営を約束し、政治的に も決定しやすいだろうが、それではどうやっても第一国土軸沿いにものを集積させ、 さらには終点の東京に吸い上げられるばかり。終点のない国土周回型の新しい国土軸 を求め、そこに新しい情報軸 をつくれないか。  東京一極集中を排除する遷都を考えるならば、思い切って“遷軸”を考えた方が早 くないか? インターネットの世界との出入り口(=国家ゲートウェイ)を従来の第 一国土軸にはない数カ所の地域に(東京より先に、又は、東京より高機能のものを) 国家社会インフラとして設け、その幹線も意識的に第一国土軸上を避ける。過去の例 からいって、国家ゲートウェイや幹線に距離的に近い地域の方がエンドユーザーへの サービスコストが安くなり易そうで、それを利用するビジネスチャンスも優先されそ うだ。東京の「ユーザー数が多い」というメリットに対して地方は「情報軸へのアク セスの安さ」というメッリットを構造的に作り出しておけば、地方を元気づけ多極を 進めてくれるかもしれない。新しい情報サービスの試みはまず地方地域を優先実施し て、そこで成り立つ仕組みを考えつつ都会を組み入れていく政策が欲しい。 また、地方や個人ユーザーといった弱者にインターネット接続負担が軽減されるよう 、JPNIC などへの国家レベルでの支援等がインフラ情報軸を実現しやすくさせる だろうに。 -*-*-*-*-*-*-  そう感じていても更に東京は強くたくましくなっていく。インターネットユーザー が増えれば、そのユーザーを対象にした新ビジネスを考えるのは自然の流れで、個人 やベンチャー企業だけでなく大企業も一気に参入開始。  例えば新聞社や雑誌社のように過去に蓄積している情報や技術をインターネットに 応用し、展開する、というところもあれば、自社内のコンピューターセクションを活 かすことをねらって、あらゆる業種からその業種特有のインターネットでの情報サー ビスを開始しはじめきた。航空会社や出版会社などがその好例だろう。  ということで昨今は、プロバイダーの数だけでなく、情報提供を含めた新サービス はもともとの本社機能が集中する東京が徐々に目立ちはじめ、これまた東京集中、東 京からのコントロールが芽を出し始めてきたようだ。  さて、そうやってインターネットがブームにのり成長軌道に安定的にのっかりつつ あるさなかで我々コアラはどのように感じ、どのような方向をめざしてきたか、少し 整理してみよう。 派生した三つの論点  インターネットが始まる前、コアラのパソコン通信は、重要な視点を我々に与えて くれた。 双方向コミュニケーションの個人に与える影響である。  電子ネットワークで名もなき地方を東京に認めて貰う関係に似て、電子会議などを 通じて自分の趣味や考え方を披露しそれにレスポンスを貰う経験は、自分の存在を肯 定的に認めて貰うように感じて個人を多いに活気づけてくれる。自分は一人ぽっちで はないという実感、そして、ネットワークを使って多くの他人へ発言する機会、いわ ば表現の自由機会が保証されているという安心感、開放感、、、基本的な人権枠が広 がった感覚はネティズン感覚の第一歩であった。  更にはその電子会議で互いの体験を日々共有することから帰属意識が産まれる電子 コミュニティは、既存の地理枠コミュニティに替わって、ネティズンに「電子地域」 としてしっかりと根を下ろしてしまっている。例えば、大分から東京に転勤したとし ても、ネットワーク上で大分に帰るオンラインUターン族等の新しい電子市民を産み 出してきており、コアラの場合、一時は、会員の半数が県外在住というまでに電子県 土が広がってきた。新しい社会構成を感じさせる。  その電子地域コミュニティでの議論や意見交換が実社会に様々に影響を与える---- 例えば、地域市民のシンクタンクとして電子会議が機能し世論を安定させたり、バー チャルカンパニーが出現したり----双方向のコミュニケーションが一人一人の個人を 力づけた結果である。 そして、それはインターネット時代に入って、三つの論点を産み出してしまった。  一つは、一般市民に最も利用されるwwwはデータベース指向で、この双方向コミュ ニケーションの良さが隠れがちになっていること。wwwは、現状ではシステム的に も利用状況的にも情報提供型(いわばデータベース型)が主体であり個人でホームペ ージをつくるのはまだまだ希である。つまりは、現状のwwwは一方向性が強く電子 会議のようなグループ・コミュニケーションに至らず、前述の電子地域コミュニティ が成立しがたい。  そういったことからか、世界を見て廻ることに飽きてきている人達も多くなった。 ブームにのせられてインターネットを始めたが面白くない、と、アクセスを止めてい る人も目立つ。かつ、作られたけれどほとんど誰からも見られないホームページがた くさんあって、ホームページの空洞化現象などと言われるようなことも出てきている。  もう一つは、世界をバックにした地域市民が誕生しつつあること。 情報提供型に落ちつけない気持ちのコアラメンバーは、少しでもコミュニケーション 型にしてみようと、wwwを自分の日記風に書くことを提案、www−diaryと してホームページを自ら作り始めた。それは面白い、他が客観的な研究論文等が多い 中で主観情報はとても読みやすい。個人の気持ちや感じを読む方が圧倒的に面白い。  では、私も、オレも、と、皆が考え始め、いち早く「One person,One home-pag e」と称して一人一人が自分のホームページ を自由に作れるように94年の10月よ り整備、その結果個人で世界から注目される人達が次々と出てきた。何しろその当時 ホームページを開くのは企業や組織人、研究者などばかりであったのに、いきなり主 婦であったりOLであったり、と、普通の市民が自分の主観を入れての開設である。 注目されて世界のあちらこちらから「貴方のホームページを見ました、、、」と電子 メールで感想が寄せられ、そこから世界への接点を持つようになった地域市民は、自 分のローカルさを思いっきりホームページに詰め込んでグローバルに売って廻ってい るかのようだ。世界に友人を持ちつつ地域活動をしたり、wwwで地域のローカリズ ムが世界に通用することを知ったり、と、まさにネイスビッツの(「グローバルに考 えローカルに行動する」から)「ローカルに考えグローバルに行動する」ことを実践 しているかのようだった。  さらに、そうやって自信をつけたコアラメンバーは、世界のあっちこっちのホーム ページを見て廻り、興味ができたホームページ作者に気軽にメールを出していく。見 ていると、ホームページが発言であり、メールがレスポンスとして機能しつつ、地域 にこだわらないグループ、コミュニティができあがっているようだ。  コアラメンバー主婦の永野さんは、湯布院町の音楽祭にボランティア参加し、その ホームページを自発的に作成。そのホームページを見て海外から外国人が訪ねてきた りするほどの広がりを持ったり、その勢いで海外友人との家庭料理のレシピを交換し あったりと毎日が楽しく忙しいようだ。  これは地域パソコン通信だけでは味わえなかったことであり、個人としての情報提 供の面白さと新しい核を持たないコミュニティを体験していることになる。しかも、 コアラメンバーである、という電子地域アイデンティティを持ちつつであるが。  三つめは、個人や小集団、小企業の自由度がハッキリと増してきていること、さら に、それらが集団になって大企業に互した力を持ち得るかも知れないこと、そして、 いよいよ個人そのものが力を発揮できる「個人の時代」「ネティズンの時代」になり つつあるように思えることであろう。  インターネットは観光事業に馴染みやすく、ユーザーからも業者側からもアプロー チが即座に起こったが、そこからもそれを感じとることが出来る。従来旅行代理店に 頼ることの多かった中小旅館・ホテルが、自主的に自らを売り込み始めることができ るのもインターネットの手軽さ・自由さであるが、その動きは小回りがきく個人経営 のホテルなどから始まり、電子メールでの予約を受けるなど小さいながらも実績が出 てきている。その実績を聞き、大ホテルや旅行関連会社などが次々と規模を生かして 豊富な情報提供を行いつつ参入。しかし、コアラまわりを見てみると、別府や湯布院 といった観光地では、個々にホテル等はホームページを持ちつつも地域単位でまとまっ てホテル検索やクラブ・スナックなどの料飲店検索を用意。さらにそれらを観光スポ ットと一緒にした地域観光の合同のホームページを作って、大組織に負けないホーム ページの顔を持ちつつある。  こういった動きがしっかりすれば、個人・小集団のメリ ットと大組織のうまみが両方だせるだろう。  さらに、昨今は、個人そのものがネティズンとして能力を発揮し、ネットスターと なって多くのネティズンから指示を得る人達が出てきている。 彼らが作るホームページは、人間性そのものに魅力があったり、作り方が楽しくて思 わず毎回見にいってしまうものなどで、そのホームページで作られているリンク集( 様々なホームページの案内集)が専門家として十分に通用するモノ。そこで自ら作っ たプログラムを発表し重宝がられているもの。ある分野の専門知識を生かしてその分 野に徹した解説や情報収集を公開しているもの。ボランティアを呼びかけその行動が なくてはならなくなりつつあるもの、などなど。  こういったホームページは集積効果 でますます充実し、その作成者であるネティズンが、本来の職業や肩書きとは別個性 として評価されるようになってきている。  それどころではなく、一部のネティズンにいたっては、本来の職業や肩書きとは別 途の既にはずすことの出来ないネティズンとしての肩書きを持ってしまっていて、本 人個人が行う判断基準はその両者を等分に大事にしたところでなされている人達が多 くなってきているようだ。場合によっては生活の糧が本業から得ていてもネティズン 肩書きからくる都合を優先したり、かつ、それが社会的にも認められたり、、、、あ べこべに、ネティズン肩書きが先に認知されてそれに付随する本業の良さが再認識さ れたり、と、本業(リアル)とネティズン業(バーチャル)が組み合わされて、両方 相まって本来の個人が評価されることも珍しくない。  特に、ネティズン業は知識を主体にしたものであり(ハイパーネットワーク社会研 究所の公文俊平所長はこれを『智業』と呼んでいる)、結果的に知識が人を集め結果 として本業を活性化させる、ということであろうか。 1994年以降の取り組み  さて、我々はこれらのことを体感しつつ、94年1月より「ハイパーネットワーク 整備」と称してNTTマルチメディア実験や通産省、郵政省プロジェクト等を組み合 わせて地域内にインターネット型のRII(Regional Information Infrastructur e)をつくるべく取り組んでいる。  その主だった特徴は、 1.情報コンセント構想  家庭や職場に定・低額で24時間接続されっぱなしの情報線を(まるで電話番号の ように)インターネットのアドレス番号付きで提供する。しかもイーサーネットコン セントとして今やパソコンLANの標準品となっている接続を実現し、インターネッ トが使いたい放題。それも世界から自パソコンへのアクセスも可能なようにして、家 庭や職場からもインターネット(www)発信可能なように考える。  また、品揃えを豊富にし、ビデオ映像も扱える光ファイバーコンセント(6Mbps)か ら、ISDN64(32.8kbps)、や、アナログ線(28.8kbps)までの、ピン〜キリの状態で 提供する。  これらはNTTマルチメディア実験応募企画書として94年1月に提案、昨今、NT Tより発表されたOCN(Open Computer Network)構想として実現されつつある と捉えられ、九州では福岡市と大分市で来年2月より先行実施、他地域では4月以降 サービス開始される。ちなみに128kbpsで24時間使いっぱなしの情報コンセントが 月々3万7千円程度であり、企業利用が一気に加速するだろう。 2.www型のマルチメディア電子会議システムを双方向コミュニケーション・ ツールとして構築する。  パソコン通信電子会議をwww方式にしたもので、発言やレスポンスをホームペー ジ方式の掲示がユーザーから簡単にできるようにする。  顔の見えるコミュニケーションが地域ネットの特徴であったし、コアラは実名利用 であったからこそコミュニケーションが盛んになったことを踏まえ、現状のインター ネットのユーザー名がアルファベットの匿名的な利用方法であることを改善する自己 紹介機能や、参加者個人単位の未読管理などを行うもの。 既に試験運転を始めているが(www2.coara.or.jp)、ホームページが簡単につくれる windowsとマッキントッシュ用のソフトを用意しており、かつ、手書きの絵や写真、 映像をも使え、それらを一括して簡単にサーバー側へ自動アップロードできる仕組み までそなえたもので、前述の情報コンセントの上で大いに情報交流のためのアプリケー ションとして機能発揮するだろう。  情報提供型のサーバーが多い中で、ホームページ離れを押さえる最大の期待をこの コミュニティウェアに寄せたい。  また、多極構造を促進させるために、ミラーリング機能を持たせて、同様の他地域、 NN連合地域にも採用を働きかけ電子会議内容をホームページとして共有できる面白 さ、楽しさを実現したいと思っている。 3.ビデオメールを実現させる。  前述のマルチメディア電子会議システムと同様に用意されるもので、光フィアバー 情報コンセントであるならば十分にビデオで電子メールが送れる、というもの。速度 が遅いところでは、手書きの絵や写真などを文字と一緒に、勿論、音声も含めてやり とりできるだろう。  メールを主体としたコミュニティグループには、こういった相手の顔や環境が文字 以外でやりとりできることが言語の壁等を低くさせつつ、コミュニティの輪や層を広 げるだろう。現在会員間で実験中である。 4.クレジットカード決済機能と地図表示機能、検索機能などをつけ加えて、中 小企業用バーチャルショップの能力アップを行う。  コアラでは「One person,One homepage」に続いて企業や組織、団体専用の「一 村一品Virturl shop」のコーナーが人気を博してきた。  それに、クレジットカードでコアラ会員であろうとなかろうと誰でも(ただしVIS Aカードのみ)オンラインでショッピングができる機能をつけ加えたもので、ただ今 店舗数を絞って実験中である。1、2ヶ月後には、VISAカード加盟店クラスの信 用度のあるお店であるならば個人商店であろうと誰でもその機能を持ってコアラ内に 店舗を持つことができるように開放予定。  また、「一村一品Virturl shop」の登録企業数が現実に多くなったこと、遠い先に は個人・中小企業の多くがここに登録され、集積効果を出して大ショッピングセンター 、大規模店舗並みの面白さや便利さが出せるよう検索機能を付けている。  つまりは、職業別電話帳のようなもので、地域名や、うろ覚えの店名、企業名、又 は買いたい物品名を指示することでホームページを選び出すことができる。  そして、該当するお店の位置を地図でも表示できたり、地図からそこにあるお店や 企業を黙視して選びホームページを検索できるように準備中である。この地図機能は 97年初頭には完成予定であり、早ければ96年末頃から掲載申し込みを受け付けた いと考えている。対象は福岡市内と大分市内から始める予定。 5.コアラ会員であれば、コアラ関連サーバーの新着情報、新規更新情報などを 自動検索し、リンク集として定時に届けることができる機能を準備中。  前述の多くの機能が本格稼働すれば何が新しいモノなのか、何が変わったのか、な かなかわかり難く、かつ、新作ホームページを見落とすことも多くなりがちだろう。 これを防ぎ、誰もが自分が作ったホームページを希望する人にタイムリーにわかって もらえる仕組み、タイムリーに読者として読み出せる仕組みとして、個人事の未読管 理機能を「情報提供管理サーバー」として準備中。  これは個人ユーザーにとって、毎日使えばデイリーの電子新聞のように、週一であ れば電子週刊誌のように機能するだろう。 6.それらの新機能が完全稼働するのを楽しみに、今の時期から呼び水的なコン テンツ制作として様々に取り組んでいる。代表的なモノとして、 (1)毎週月曜19:30から30分のビデオ映像番組をインターネット上に流している。 コアラ事務局とコアラ会員でディジタルハンディビデオカメラで取材した内容やハイ パーステーション内スタジオ(コアラ事務局とハイパーネットワーク社会研究所のあ る場所をハイパーステーションと呼んでいるが、そこは簡単なビデオスタジオを持っ ている)での対談をリアルタイムで流しつつ、それ以降はビデオ・オン・ディマンド になるようになっている。 (2)週一回の電子メール週刊誌「イベント・コアラ」を会員向けに発行している。 内容は、福岡、大分の内容をベースにしたものでお店の情報や面白かったこと、イベ ント予告など、多岐にわたっており、OL層に向けている。現在三千名を超える読者 がいるが、将来的にビデオメールで出したい、さらには回数を増やしたり、興味別の ものを作ったりしたいと考えている。 (3)その他、平松守彦大分県知事の毎週行っているラジオ放送をラジオ・オン・デ ィマンドでのせたページや、ハイパーネットワーク社会研究所やコアラ事務局発行の 各種雑誌や文献類のホームページ等をつくっており、未来のネットワークへのビジョ ンづくりに励んでいる。 7.上記を運用管理する中立セクターとしての「地域情報化委員会」を検討する。  公共のインフラ電子ネットワークとしては、発言機会の自由、思想、情報の伝達の 自由、情報インフラ利用の自由、プライパシーの保護、民主主義の擁護、などが保証 されねばならない。  反面、地方は採算がとれがたいということから、民間企業の力では地方の隅々まで この情報インフラ整備は早急に進みそうにない。そういったことも含めて地域振興と いうことから第三セクター的に電子ネットワークを構築運営せざるを得ない場合が多 いが、そのモデルケースとして、教育が中立性を求めて教育委員会ができたように 「地域情報化委員会」を検討してはどうか。委員会そのものは、非営利の団体でビジョ ンや進むべき方向性を示しつつ、運営とシステム的透明性を保証し、市民の番犬とし て公共性の本質チェックを行うが、ユーザー 主導型組織を目指してそれらの運営には 勿論電子会議等を積極的に使われることを期待したい。  これら運営の仕組みは単年度では実現が難しいかもしれないが、現在「地域情報化 委員会準備会(会長;公文俊平)」までできており、徐々に本当の社会インフラ、社 会組織として設置されるよう議論を進めている。 21世紀を目前にして  情報コンセントとwww型電子会議で、インターネットとパソコン通信の両者の良 さを組み合わせたRII(地域情報インフラ)が実現されれば、情報提供型とコミュ ニケーション型が自然にとけあって、今まで以上に、世界に接続された地域市民が主 人公となった、電子地域コミュニティができあがるだろう。インターネットでバーチ ャル空間が広がりつつも地域というリアル社会を核とすることで、より生活者として の利用が広がり深まり、その上にビジネス利用も構築されるだろう。  それに加えて、よりリアルな高速交通体系も様々に整備が進んできた。  例えば、福岡〜大分間の高速道路開通は、福岡の天神を「大分県天神町」、湯布院 町を「福岡県湯布院町」という感覚になるほど地域感を変革させている。それを象徴 するかのように昨今福岡からのコアラ入会、利用が日常化してきた。  結果的にリアル道路(高速道)とバーチャル情報道路(情報ハイウェイ/コアラの 百々地のアクセスポイントは積極的に増強されている)が同時期に開通した格好であ り、「電子の地域」と「福岡〜大分ブロック新経済圏」が自然に融合したようで、未 来に向けて新しいビジョン、次のステップへと夢を膨らませてくれる。  その高速道路/情報道路の端は博多湾と別府湾で結ばれており、かつ、両端ともに 福岡リサーチパーク、別府リサーチヒル・大分ソフトパークと情報産業を集積させて いる。そして、方や天神に代表される大都市の賑わい、方や湯布院や別府温泉の自然 のうるおい、と、性格の違いを持ちながら立地特性を際だたせていてそれぞれに魅力 的だ。ならばそれらの地域を結ぶ帯状の一帯をマルチメディアやインターネットで満 たし、「快適マルチメディア居住環境・産業形成地域」にするプロジェクトはどうだ ろう。 題して、   博多湾〜別府湾間マルチメディア居住環境地帯 -形成プロジェクト   Hakata Beppu inter-bay multimedia Habitation Belt - project  その中間域には久留米や日田といった情報化に励んでいる地域もある。その他の一 次産業主体の市町村も一次産業にマルチメディアを取り込むことに一生懸命であり、 在宅勤務プロジェクトを立ちあげて、マルチメディア兼業農家なる新職業もできるか もしれない。いや、中間域に住めばどちらのソフト産業域にも一時間で通えて、未来 の「日常の森林生活、時折の出勤」で花形職業従事も可能だろう。その他にも都会で は難しい職住接近の素晴らしい生活を実現できるような産業形成を図ってみよう。  さらには、別府湾を見渡す素晴らしい景勝地に立命館がアジア太平洋大学を99年 に開校する予定になっている。総て英語で授業が行われ、かつ、学生の半数を海外か ら集めるものでアジア各国からの支援や国内主要企業からの奨学資金の支援組織など 着々と準備が進められている。  勿論、博多ではアジアビジネスセンターが設立され九州産業のアジア化、アジア産 業と九州の連携、と、今後の活躍が大いに注目されているし、アジアマンスでの文化 交流やスポーツ交流など積極的な交流を行っているし、福岡も大分もアジアの地域、 主要都市との地域感交流事業を大きな事業としてともに持ち、推進している。  だったら、HB−beltを、21世紀のアジア情報軸(AII)の一環ととらえて、 アジア地域を睨んだ21世紀にまたがるビッグ事業と銘打って皆で考えあうことも面 白い。ちょうど2002年にワールドカップサッカーが大分で開催されるならば、ア ジア各地から福岡を表玄関として人々があつまってくるに違いないし、中期目標とし ても面白そうだ。  コアラはそのような地域連携をいつも行ってきたし、その側には、国内のみに留ま らずアジア各地との情報化連携を考え、様々に提言、ビジョンづくり、実験推進を行 う(財)ハイパーネットワーク社会研究所がある。国レベルでの郵政省と通産省の共 管研究所で本部が地方にあることが最大の特徴の一つであり、我々は、それらの特質 を最大限に生かして新しい地域づくりビジョンを掲げる時期が来ているように思う。